第一章

4/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
――・・・ ぬるい風が髪を揺らす。木が擦れてザワザワと音が鳴る。 あ…、夢だ。だって早く行きたいのに足が思うように動かない。ピンクの波はすぐそばまで来てるのに。 きれいな色が、あたしを待ってる。 あと少し… その時、桜の方から声がした。 ――― カナ、 桜の方から、じゃない!この声は、桜の声だ。 そう気づいた瞬間、桜は人の姿に変わった。 あたしより少し年上の、薄い着物を着た男の子に。 ―――カナ、一年ぶりだね。 あ、あたし知ってる!この男の子に会ったことある! でも、一年ぶり? ―――カナは覚えてないけど、あの日から毎年会ってるんだよ。 あの日?もしかして、今日おかあさんに聞いた3歳の頃のこと? そう思ったら、男の子はニコッと笑った。 ・・・――― 起きると、あたしの手のひらには一枚、桜の花びらが握られていた。 「おかあさんおかーさん!!」 あたしは興奮ぎみに見た夢をおかあさんに話した。 だってとても不思議で、怖くて、綺麗で。 おかあさんは、服に着いてた花びらが入り込んだんでしょって笑ったけど、あたしはすごくドキドキしていた。 だって不思議で怖くて、とても綺麗だったから。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!