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――・・・
ぬるい風が髪を揺らす。木が擦れてザワザワと音が鳴る。
あ…、夢だ。だって早く行きたいのに足が思うように動かない。ピンクの波はすぐそばまで来てるのに。
きれいな色が、あたしを待ってる。
あと少し…
その時、桜の方から声がした。
――― カナ、
桜の方から、じゃない!この声は、桜の声だ。
そう気づいた瞬間、桜は人の姿に変わった。
あたしより少し年上の、薄い着物を着た男の子に。
―――カナ、一年ぶりだね。
あ、あたし知ってる!この男の子に会ったことある!
でも、一年ぶり?
―――カナは覚えてないけど、あの日から毎年会ってるんだよ。
あの日?もしかして、今日おかあさんに聞いた3歳の頃のこと?
そう思ったら、男の子はニコッと笑った。
・・・―――
起きると、あたしの手のひらには一枚、桜の花びらが握られていた。
「おかあさんおかーさん!!」
あたしは興奮ぎみに見た夢をおかあさんに話した。
だってとても不思議で、怖くて、綺麗で。
おかあさんは、服に着いてた花びらが入り込んだんでしょって笑ったけど、あたしはすごくドキドキしていた。
だって不思議で怖くて、とても綺麗だったから。
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