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それから毎日、あの男の子の夢を見た。
あたしは男の子に会うたびドキドキして、起きてる時もあの桜を窓から眺めるようになった。
「まだ、五分咲きだって、テレビで言ってた…。」
夢でしか会えないなんて、まるで漫画やおとぎ話みたいで。あたしはあの子に、恋をしてしまった。
溜め息をしながら、そうおもった。
―――・・・
「え!?」
何度目かの夢の中。いきなり男の子は言った。
―――夢で会えるのは、あと数回。
え?なんで?
―――今年は桜の元気がないんだ。それに、あの日カナと約束したから。
確かに、テレビではいつもより遅い開花だって言ってた。でも、約束って?
―――約束したんだ。こうして会うのも、あと少しだよ。
・・・――
あたしはその約束を覚えてない。小さかったから?
とにかく、あたしは会えなくなるのが嫌で、山の桜に水をあげたり桜の前でお祈りをした。
もうすぐあたしの誕生日。
せめてその日までは彼に会いたい。
あたしはおかあさんに桜の所に行くのを止められながら、それでも祈らずにはいられなかった。
だって、好きなの。
好きなんだもん。
きっとあたしは、あの日から彼が好きだったんだ。だからあの桜を見る度に、うっとりと溜め息がでたんだ…。
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