第一章

5/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
それから毎日、あの男の子の夢を見た。 あたしは男の子に会うたびドキドキして、起きてる時もあの桜を窓から眺めるようになった。 「まだ、五分咲きだって、テレビで言ってた…。」 夢でしか会えないなんて、まるで漫画やおとぎ話みたいで。あたしはあの子に、恋をしてしまった。 溜め息をしながら、そうおもった。 ―――・・・ 「え!?」 何度目かの夢の中。いきなり男の子は言った。 ―――夢で会えるのは、あと数回。 え?なんで? ―――今年は桜の元気がないんだ。それに、あの日カナと約束したから。 確かに、テレビではいつもより遅い開花だって言ってた。でも、約束って? ―――約束したんだ。こうして会うのも、あと少しだよ。 ・・・―― あたしはその約束を覚えてない。小さかったから? とにかく、あたしは会えなくなるのが嫌で、山の桜に水をあげたり桜の前でお祈りをした。 もうすぐあたしの誕生日。 せめてその日までは彼に会いたい。 あたしはおかあさんに桜の所に行くのを止められながら、それでも祈らずにはいられなかった。 だって、好きなの。 好きなんだもん。 きっとあたしは、あの日から彼が好きだったんだ。だからあの桜を見る度に、うっとりと溜め息がでたんだ…。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!