第一章

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「カナ、明日は何が食べたい?」 夜。寝る前におかあさんがあたしに聞いた。 「え?」 「え?って、明日はカナの誕生日じゃない!忘れてたの?」 おかあさんに言われるまで、あたしはすっかりわすれていた。それくらい、あたしは彼に会えなくなるのが嫌だった。それしか頭になかった。 「う~ん、なんでもいい…。」 「え?いつもなら、ケーキにお寿司にってうるさいのに…」 「明日決めるから!今日はもう寝ていい?」 「カナ、最近変よ?」 きっとおかあさんは、娘が恋をしたことに気付いてないんだ。きっと自分の時の事なんか忘れちゃってるだろうし。 「なんでもないよ。おやすみ。」 おかあさんは何か言いたそうにしながら、あたしの部屋から出ていった。 さぁ早く!早く彼に会いに行かなくちゃ。 でもそう思うとなかなか眠れなくて、ソワソワしたあたしは、玄関からそーっと抜け出した。 「はぁっ、はぁっ…」 暗い夜道を、あの桜を目指して駆け抜ける。 ――― ぬるい風が髪を揺らして、木が擦れてザワザワと音が鳴る。 月明かりの薄暗い中にぼんやり浮かぶ桜が怖いのにきれいで、あたしはこれが夢なのか本当なのか分からなくなってきた。ただ一つ分かることは、彼に会いたい。 それだけだった。 ―――カナ、
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