第一章

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薄暗い桜の前に、薄い着物を着た男の子が見えた。 「…居た!?」 あたしは悲しいような嬉しいような、とにかく涙が出そうになって、思わず彼の元へ走った。 足が軽い。すぐに彼に手が届く。…夢じゃないんだ。 勢い余ってだきついてしまって、慌てて離れて謝った。 「わっ、ご、ごめんなさい!」 「ふふっ…。」 夢では何度も会ってるはずなのに、初めて会ったような気がして恥ずかしくなった。 「いいよ。カナが会いに来てくれたから。」 でも彼はそう言って、あたしに手を伸ばした。 (………わ!) 彼はあたしを引き寄せて抱き締めてくれた。 「約束…」 「へっ!?」 「約束、守ってくれたね。」 約束…?あの頃の? あたしは、男の子に抱き締められたことなんかなかったから、そのことで頭がフワフワしていた。 『もうすぐ、会えなくなる…』 でもすぐに覚えてない約束のことを思い出して、あたしは彼の肩越しに見える桜を見上げた。 薄暗い闇に桜はうっすらと浮かび、綺麗なはずの桜が、急に怖く見えた。 「大人になったら、来てくれるって約束…。」 「……え…?」 大好きなこの男の子が、急に怖く思えた。
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