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桜のメモリー
「坊ちゃん、また桜の季節になりましたよ」
坊ちゃんのお墓に桜の枝を供えた。春の日差しが桜の花びらに反射しキラキラと輝いている。坊ちゃんにも届いているだろうか。
この地域には、もう誰も住んでいない。桜の木を折っても咎める人はいない。坊ちゃんが眠る霊園は桜の木に囲まれ、春になると咲き誇る花びらが風に乗り、空がピンク色に染まる。
「こんにちは。桜の花びらが舞って、掃除が大変ですね」
「ですね。お互いがんばりましょう」
隣の中林さんの墓守、S1928789さんだ。中林さんの家族は遠く離れているため、ただただお墓を守り続ける日々が続いている。
私も坊ちゃんが眠ってからすでに40年、ずっとずっとお墓を守り続けている。
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