第一夜

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 胃が……痛い。という夢を見て目覚めたら、本当にキリキリと痛んでいる。  じっとりとした汗も気持ち悪いし、このままでは眠れなさそうなので、ベッドから滑り出て冷蔵庫へ向かう。  いくらか暖かくなってきたとはいえ深夜のフローリングからは冷えが這い上がってくるし、何も羽織っていない肩は汗が冷たく凍るようだ。  薬瓶からザラリと錠剤を手のひらにとり水で流し込む。  ボーナス時に一目惚れした椅子で、痛みが退くのを膝を抱え丸まって浅い呼吸で待っていると、なんだか無性に泣きたい気分になって客観視しているもう一人の自分が鼻で笑っているようだ。  少し痛みが無くなってくると、ぐずぐずする鼻をかみ長方形の小箱に手を伸ばす。  コイツも……胃痛の原因の一つなのだろうけど、「ダメな私」は止めることができない。  細身のライターで火を着け、大きく吸い込む。同じだけを吐き出し、薄暗がりに靄を作る。  ジ、ジジ……  葉が燃える音を聞きながらぼおっと小さな赤い点をしばらく見てから、灰皿にぎゅっと押しつけた。  1日の終わりと始まりの隙間に閉じ込められてしまったようだ。
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