走馬灯のように

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子供の頃から、何故か自分が幸せだと思えたことがなかった。 育った環境は極めて普通の平均的な家庭だと思う。 共働きの両親がいて一人っ子の私はかわいがられていたし、お金にも不自由しなかった。 もちろん、共働きだから忙しい二人だったけれど、それはどこにでもあることだし、イベントごとはマメにしてくれていたし、色んなところにも連れて行ってくれた。 容姿はそれなりだったし、モテないほうではなかった。 いじめとかそういうことにも無縁だった。友人にも恵まれていた。 なのに、自分の存在価値がちっぽけに思えていた。いつもいつも。 何故こんなにもさもしい存在なのだろうか。 どうしてこんなにも歪んだ感情を抱えているのだろうか。 その理由がまったく思い当たらず。 ただ心の奥底で抱える「私は普通とは違うんだ」という漠然としたもやもやとしたものを消すことができなかった。 もちろん、中二病っていう言葉もあるし、昔からこういう訳のわからないネガティブな感情に振り回されている人間は世の中には多くいることぐらい理解はしていた。 だから、私もそういう人間なんだろうと言い聞かせていた。
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