走馬灯のように

7/13
前へ
/31ページ
次へ
仲間内から浮きたくない。 オトナになれば、リア充なんて言葉とは無縁の他の級友とは違う目線になれるような気がした。 その見えない境界線を飛び越えてみたい。 バカみたいにそう思っていた。 だから、内心焦っていた。 おそらくは彼のほうも同じだったんだろう。 仲間内で私だけが境界線のこっち側に立っていることがわかった数日後、その日は明日から新学期が始まる日だった。 彼の部屋で必然的にそういう雰囲気になった。 ベッドに腰掛けていつものようにキス。 キスは付き合ってから何度もしたけれど、ちっともいいと思わなかった。 友人はみんな口々に「キスが好き」だとか「ドキドキする」だとか「もっと彼のことを好きになった」だとか言うのに。 私はちっとも好きになれなかった。 キスも、そして彼自身も。 だから、処女を捨てた友人の言葉に賭けてみたかった、「あー、私幸せだって思った」っていう言葉に。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加