いつもの朝

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教室に着くと、既に半数くらいの生徒が教室内にいた。 その大半が雑談をしている中で、1人だけ机に突っ伏して寝ている男子がいる。樹だ。 「こうして黙っとればイケメンなんやけどねぇ」 と、頬に手を添えてため息をつき、席に着く恋。 そして、反対向きに、こちらを向くようにして椅子に座る。 背もたれの部分に腕を組んで載せ、その上にあごを載せて樹を観察する恋。 「いつまで見てる気なのさ」 「だって見た目はボクのタイプなんやもん」 呆れながら言うと、即答で返す恋。 「恋がいうと冗談に聞こえない…」 呆れながら、僕も席に着く。 「冗談やなくて本気やもん」 「……そう」 もう突っこまないでおいとこう。 「ん…」 あ、樹が起きた。 大きな欠伸をしながら伸びをする樹。 「あら、2人とも来てたのね。お早う」 そう、笑顔で言う樹。 その瞬間、数名の人が振り向いた。 うん、驚くよね。僕はもう慣れたけど。 見た目不良男子なのにこの口調。 「おはよー、樹」 「おはようさん、樹」 そして、暫く雑談が続く。 キーンコーンカーンコーン と、始業のチャイムが鳴る。 そのチャイムを合図に生徒達が席に着く。 恋も椅子に座り直し前を向く。 授業の内容は普通の学校と殆ど変わらないが、1つだけ、他とは違う所がある。 特殊能力に関する授業があるところだ。 その授業は、一般の人も希望すれば教養として受けることが出来る この学園には、多くの特殊能力者が通っているらしい。 そのことが、僕がこの学園を志望した動機だ。 今日の一限の授業は、特殊能力に関しての授業だ。 特殊能力は、遺伝性は見られず、例えば、双子の内の片方しか能力を有さない、なんてことはざらにあるらしい。 普段なら、授業は退屈で眠くなるのだが、特殊能力に関する科目については別だ。 好奇心がそそられる。 その中でも、一番テンションの上がる事実は、特殊能力者は、先天性だけでなく、後天性もいると言うことだ。 要するに、僕にも特殊能力者になる可能性があると言うことだ。 特殊能力、もしも使えるなら、どれだけ素敵だろうか。 遥先輩も特殊能力者らしく、見せて貰ったこともある。 うん、めちゃくちゃ格好良かった。厨二心がくすぐられた。 僕も特殊能力を使えたらなぁ… そんなことをぼんやりと思いながら、授業を聞いていた。
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