4月、君はスカートが短かった。

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女子高の教師になって三年目の春、暖かく、最高に気持ちのいい朝。 横を通り過ぎる制服には、見覚えのない顔もちらほら。 新入生。 春は、新しいものだらけだ。 僕の腕時計も今日から新しいものにした。といっても、僕の場合は時計が壊れてしまったから変えただけなのだが。 高校に慣れた上級生は、春色のセーターに短いスカートで、器用に巻かれた髪をふわふわと揺らしながら、時々僕に会釈したり、話し掛けたりしてくる。 「おはようりっさんー」 「りっさんじゃなくて律先生だろ、おはよう佐伯」 「えっ、りっさん下の名前で呼んでほしいのー!」 「先生って付いてれば何でもいいよ、もう」 「じゃ、りっさん先生ね!」 「えー…」 僕の不満げな声は、笑い声に置いていかれてしまった。新年度も、僕の呼び名はりっさんのようだ。 りっさん。もとい、晒間律。 さらしま、って名字は、ごつくて好きじゃない。親しみにくい感じだから、基本名前で呼んでもらえた方が嬉しい。 なんて、ぼーっとしながら考えていると、いきなり僕のすぐ前から叫び声がした。 「変態!こっち見んなよ!」 はっとして声のした方を見ると、異常にスカートの短い女子。 まだ着慣れていなさそうなブレザーとミスマッチな長さだ。上だけ新入生。みたいな。 「おっさん、女のスカート見るの趣味なの?最悪。」 と、彼女の見ている相手は僕。ついでに、周りの生徒が見ているのも、僕。 「おっさんじゃなくて、先生。うちの高校でしょ、君」 「うちの…?え、おっさんあの高校の先生なの?」 彼女の指差す先には僕の目的地。いや、僕と彼女とその他大勢の生徒の目的地。 「そう言ってるだろ?入学式では最低限のマナーは守るようにな。学校着いたらその短すぎるスカートどうにかする事」 「やっぱ見てたんじゃん、エロ教師」 「見る理由がないからそれは間違いだ」 「そーだ、名前は?」 「律。律先生と呼んでくれればいい。」 「律先生にスカート見られたーって、新しい担任に言ってやるから!」 「あ、おい、見てないっての!」 なんて言葉は彼女には聞こえなかったようで、走り去ってしまった。 せっかくの気持ちの良い朝が、面倒な朝に変わりそうな予感。 面倒事のきっかけを作ったのは、スカートの長さがギリギリな、君だった。
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