弥生の三日月

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
女が男を待たせる時代になっただなんて。 昔の人には理解できないかも知れない。 終電ぎりぎり駅の階段を駆け降りた。 一息着いた電車のなかは人の姿がどこにもない。 春に決算期に帰りが遅くなることはいつものことだけれど。 今日は格別遅い気がする。 残業なんかに負けるなってラインに私はまだ返信していない。 へとへとなんだって眠い目を擦ってる。 結婚して数年、彼との生活はまともにできているのかな。 私は電車を降りて、家路に着こうとした。 「残業、お疲れ」 「明日も早いんじゃないの?」 「ご飯まだだろ?」 心配で迎えに来てくれた彼の後ろで三日月が笑う。 私と言えば頷くだけで、こんな温もりが続けばいいと心のどこかで思っている。 完 2017305
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!