第1章

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RPGをしていると、もっとも気が重くなる時期がレベル13だ。 行動範囲も狭いから稼ぎ場所も少なく、入手経験値とゴールドも少ないから仲間内の戦力を整えるための武器や防具を手に入れるための報酬の分配に手間取るうえ…固い結束を積み上げるだけの時もともに過ごしていない。 なかなかレベルも上がらず、戦力も安定しない…戦闘不能にもなりやすく戦略上の技能の幅も狭い…一番フラストレーションが溜まる時期だ。 敵の魔物が、全体攻撃やイヤらしい特殊攻撃を使い始めるのも冒険者が中級者になった頃。 そういう意味で、実際の冒険者も中級者が一番苦労し…挫折する。 挫折した冒険者の中には、培った技能を生かして山賊になる者も少なくないが…そんなことは今はどうでも良い話だ。 今回は、とある冒険者のパーティーが資金難で分解されようとしている話だ。 報酬で斧を買うか、鎧を買うか…それとも弓矢を買うか。 死活問題に発展するため、慎重に決めねばならないが…どれか一つしか買えないなら当然仲間割れが起こる。 ここは冒険者の酒場。 斧を使う戦士、魔法使い、狩人…僧侶、盗賊のパーティーが酒も入って荒れている。 仲間内での借金による権力関係も当然のこと…散々わめき散らしたあげく、パーティーの維持費である共有財産を工面するため狩人がリストラされようとしていた。 「そんなの駄目! 彼の支援はどうなるの?」 狩人に恋心を抱く僧侶は断固としてリストラに反対した。 「盾にもならねぇ、武器は打ち止めがある…こんな役立たずは養っていけねぇんだよ!」 僧侶は生命線だからパーティーには必要だ。 このままでは狩人と僧侶が引き離されてしまう。 「この人が行くなら私も離れます!」 狩人の手を離さない僧侶の手首を、戦士が掴んだ。 「お前はいなきゃ困る。 それに吟遊詩人よりはましだがそんな穀潰し…養えるのか?」 他のパーティーに行っても似たようなものだ。 極力出費は押さえていくが、足りないものが出るときは出る。
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