依頼されたので答えてやろう

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 ある星の作家希望の創造神から、オレの今までの短い人生の中で、ギリギリだったことを教えてくれという依頼を受けた。  いや、人生という言葉は間違っている。オレの28年間の人生と、死後一年間の死神生活と言うべきだろう。  オレは宇宙の大王となってしまい、いつもかなり暇なのだ。本来の宇宙の大王の仕事は前宇宙の大王のグランドラスがやってくれている。まあ、コイツとの始めての出会いもかなりギリギリだったのだが、ここでは述べないでおこう。  やはり視覚的にギリギリという言葉で思い出すのは、オレの妹の麻里子だろう。当時の宇宙の大王グランドラスから依頼を受けた仕事だったのだが、その時麻里子が現場にいたので全てを任せた。大気圏に突入してきた敵宇宙艦隊の旗艦に、彼女の持つ魔法の杖であり悪魔の眷属であるビューナスを使い、水魔法ウォーターカッターでまさに数メートルもない間合いでこの旗艦を真っ二つにした。どうやってこの映像を撮っていたのかは定かではないが、まさに鬼気迫るものがある。悪魔たちに大人気の麻里子がさらに人気者になってしまった。兄としては嬉しく思うのだが、やはり子供の頃のあの可愛い麻里子でいて欲しいとも思うのだが、今となってはほぼ無理だ。ブッタ切った後のあの表情では嫁のもらい手はないだろうと思っていたのだが、すでに婚約者は確保している。顔も肉体的にもオレによく似た酒井大輔だ。麻里子はオレに似ているので選んだようだが、その大輔も頭角を現し、今では大魔王デヴィラ親衛隊の次席にまで上り詰めた。大輔は温厚で気のいいヤツだがその分自分に厳しい。親衛隊員のほとんどがこのようなヤツラばかりなのだが、大輔は群を抜いていると言っても過言ではない。  大輔とオレの間では少しだけ諍いがあった。これは私的なことではなく、武術鍛錬に置いてだ。今は遥かにオレの実力が勝ってしまったのだが、始めた当時は大輔には誰も勝てなかった。その大輔との修行の中でギリギリだったのが、スピードだ。大輔とオレは技もチカラも互角だった。だがオレには大輔の持っていないスピードが僅かに勝っていた。オレの息子のゴンタに教わった瞬歩と言う足運びだ。水面歩行の応用だと思ってもらってもいいだろう。これにより、ギリギリ勝てたなとオレは思い出に浸ってしまった。
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