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活発な性格で、笑顔がよく似合う。新雪のような色白の肌に、ぱっちりと大きな黒目がちの目が印象的。 ちょこんと丸みのある小鼻と、グロスで艶かしく光る唇。栗色の髪は肩口で切り揃えられ、今日はピンクの髪留めで前髪を留めている。微かに漂う柑橘系の香りが、鼻腔を刺激してくる。 「バイト帰り?」 「うん。そっちは?」 「図書館。勉強。誰かさんたちのせいで」 「……まぁ、その。ごめん」 子供同士が親交があれば、必然的に親同士も繋がる。だけどそこで起こるのは、子供同士の無邪気な遊びとは比べ物にならない、ギスギスした小競り合い。 表面上は仲が良いのを装うけれど、腹には一物を抱えている。一方の子供は優秀で、一方がそこそこなら、そこそこの親は子供に、勉強を強要する。 その被害に遭っているのが、日奈子だ。日奈子は、俺と同じ高校に通っている。 本来ならもう一ランク──二ランク下を教師から薦められていたのに無理して受験し──させられ──それでも合格してしまい、通わざるを得なくなっている。 同年代の俺がいるから、更に兄貴がいたから。二人とも頭が良いから、という理由だけで。 今の位置を保つのさえギリギリのはずなのに、追いつこうと必死な勉強を暗に強いられている。本人の意思は無視され、無理をしてまでついてくる懸命さに、申し訳ない。 「冗談だよ?何本気にしてんの」 小馬鹿にするように肩を強めに叩かれた。笑顔だ。 「本気だったら秘密にしてるし。まだついていくのが精いっぱいだけど、必ず追い越すって目標にしてんだから勝手に落ち込まない。私の意思で、勉強してんの」 「そう、なんだ」 半分建前、半分本音、といった感じだな。 「絶対追い越す。だからそれまで首洗って待ってろ」 「わっ、女子が使う言葉じゃないでしょ」 「にゃはは!」 「変な笑い方」 あえて、だろう。言葉も、笑い方も。俺に気を使わせないために。自らを鼓舞するために。
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