第1章 骨董屋

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 合間を縫って店主に例のウロコの入手経路を詳しく聞いてみた。 10数年も前に見知らぬ冒険家と名乗る男性が持って来た、ということだった。 どうやって手に入れたのかといった詳しい話は聞いていないし、 その人はそれ以後現れないので、素性もなにも知らないそうだ。  めぼしい情報は手に入らなかったので、博士はさぞやがっかりするだろう。 手紙で報告するのも心苦しいけど、まぁ仕方がない。  翌朝、店主に礼を言って出発した。街中でファムを呼ぶと騒ぎになるんで、 外へ出てからにした。 「ファム」  普通の声で呼ぶと、また少し間を開けて現れた。 「鞍をつけるからできるだけ下にさがってくれる?」  ファムは尾ビレが地面にくっつくぐらい下がってくれた。  2つに分かれている背ビレの間に革のベルト2本で鞍を付ける。 採寸しただけあってサイズはバッチリだった。  背中に乗り込んでから前の背ビレの根元に手綱をかけ、金具で調節する。 根元の軟骨部分なのでファムも痛くないだろうし、しっかりと付けることができ、 手直しなんていらないじゃないかっていうぐらい良くできていた。 「つけた感じはどう?」  ファムはちょっと体を揺らしてみてから、少々不満そうな目を向けた。 「邪魔なのはわかるよ、けど乗ってる間だけは我慢してくれ!  痛いとか苦しいとかあったら改善するからさ」  しょうがないなぁって感じだった。 「ありがと、じゃ、行こうか、ホルツ村はあっちの方角だよ」  南西方向を指差したのを目だけ動かして確認し、出発をした。
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