第2章 ホルス村

4/4
前へ
/26ページ
次へ
 網から逃げようともがくファムに絡まるロープを無意識につかんでしまった。 そのまま、網ごと上空に連れていかれ、急上昇したときに耐えきれず手を離した。 当然のごとく左腕、左肩、左足骨折の大怪我。頭を打たずにすんだのと、 落ちた場所が柔らかい地面だったからその程度で済んだものの、 少しでもズレてたら岩場だったから即死してただろう。 「そんで怪我したから、ずっと帰って来れなかったってわけか」 「うん、治った頃にはもう真冬で身動きできなかったしね」 「色々あったのねぇ……」  母さんにしみじみ言われて良心が痛んだ。あとでちゃんと謝っておこう。 「で、そんとき捕まえようとしたのがファムなんだろ? 良くついて来てくれたなぁ」 「うん、おれもそう思う」 「おまえ昔から動物には異常に好かれるもんな、すでに才能だろ、それ」 「才能ねぇ……」  どんな動物が相手でもわりとすぐに仲良くなれるのは本当だった。 けど才能といわるとどうなんだろう。 「世界初の浮遊魚使いか、カッコイイよね」  ローフィルでも言われたけど、オラフにまで浮遊魚使いとか言われるとは思ってもなかった。 「浮遊魚使いとかそんなんじゃないし、やめてくれよ」 「なんで? ドラゴンに乗れる人が竜使いなんだから、 浮遊魚に乗れるディートは浮遊魚使いだろ?」 「なんか違うっていうか……、うまく言えないけどその呼び方好きじゃないんだ」  ちょっと上から目線なところが気に食わない。 「ん~、わかる気はするけどね、でもたぶんみんなそう呼ぶと思うよ」  オラフのこの予言は見事に当たることになった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加