第1章 骨董屋

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聞こえる範囲にいるかわからないけどとりあえず呼んでみた。 「ファム!」  聞こえたらしく、少しの間を置いて上空から現れた。 「えぇぇぇぇぇぇ!!」  店主は仰天してファムを指差した。 「浮遊魚!!」  その大声で町の人も上空を見上げ、そこにいるファムに同じように仰天した。 「なんで、どうして、いったいどうなってるんだね!?」  そんな矢継ぎ早に聞かれても。 「クレーフェンの谷にいるうちに仲良くなって、一緒について来てくれたんです」 「仲良く……浮遊魚と……」  店主は信じられないといった表情だった。まぁ無理もない。 「それでこの前買った浮遊魚のウロコのことなんですが……」 「いやいや、そんなことどうでもいいから、もうちょっと近くで浮遊魚を見せてくれないか」  そのことを聞くためにここに寄ったんで、どうでもよくないんだけど。 でもまぁ、近くで見たいって気持ちは良くわかる。 「ファム、この人がおまえを近くで見たいんだって、もうちょっと降りてこれる?」  ファムはうなずき、なるべく低く、けど大人でもギリギリ手が届かない高さまで 降りてきてくれた。  そばにいた町の人全員が集まり、ファムに見入っている。 「まさか死ぬ前に本物の浮遊魚を目にできるとは……」  店主はいたく感激していた。
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