第1章 骨董屋

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「どうしたんだね、その荷物は」  店主は大荷物に驚いた様子だった。 「ファム用の鞍や手綱を作ろうと思いまして」 「ああ、なるほど、そういうのを作るのがうまい奴も今夜呼んであるから、 そいつに作ってもらうといい」 「呼んである?」 「ああ、皆も君の話が聞きたいというから知り合いをたくさん呼んだんだ」  知らぬ間になんだか大事になってる。 「え? あの、そんなお聞かせするような話なんて別に」 「いやいや、この世で初めての浮遊魚使いの話に聞く価値がないわけがない」  浮遊魚使い? なんか虚像が独り歩きしてる気がする……。 「みんな楽しみにしてるよ」  ポンポンと背中を叩いて、店主は奥へ行ってしまった。  えっと、まいったな、どうしよう。今さら逃げるわけにもいかないし、 腹を決めるしかないか。  谷から戻ってこっち、予想外なことばかり起こって自分自身がついていけない。  ちょっと頭を冷やして冷静になろう。とりあえず、落ち着くために大きく深呼吸をしてみた。
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