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チン
花園まで続くエレベータが最上階に付いた合図を鳴らす。
「さて、どこにいるのか…」
(にしても本当に花ばっかだな…。広すぎて…この中から探すのって大変な気がするんだけど…)
………………あ。
「……もしかして…」
こんな色鮮やかな花たちの中で、不釣り合いな黒を見つけた。
急いで駆け寄る。
「……嘘……」
花たちに囲まれ、綺麗な寝顔を見せている少年が一人。こんなに真っ黒と言える黒髪は見たことがないくらいで、サラサラとしてそうだ。睫毛も長くピンクの頬と唇は桃のような艶感。
「……まさかこの子が紅劉 葵…?」
そこで小林は少年の首に目がいった。
「これは…首輪…?」
「……………人の寝顔まじまじ見ないでくれる?」
じーっと見ていたら、唇が動いた。というか言葉を発したのだ。
「うわあっ!!!」
驚いて少し後ろに後ずさる。さっきまで寝ていた少年は、大きくあくびをしてむくり、と起き上がった。
「…何だよ。僕は幽霊か何かか。」
「う、お、あ…ごめん……。」
「……まあ、いいけど。で?僕になんか用?」
「えっと…君って“紅劉 葵”でいいんだよね?」
すると少年はムッとした顔をして、
「そうだけど。何でそんな事聞くの。」
「いや…担任の湯崎先生に君を連れて来て欲しいって頼まれて…その…うん。」
ジーーーーーーー
今度は小林がじーっと見られる番なのか、葵は疑いの目を向ける。
「……ポテチ。」
《嘘は言ってないみたいだぞー!本当に湯崎からの使いのようだ!》
「…え?」
どこからか別の声が……、と思い周りを見ると、葵の頭にぽすん。と、少し変わったクマのぬいぐるみが乗っかった。
「…………え?」
《あ!このガキ今、なんだこのへんてこなぬいぐるみって思ったぞ!なあ葵!》
「……へぇ。僕にはどうでもいいけど、…まあポテチはそこらへんのぬいぐるみよりかはかわいいんじゃない?」
(え、何これ。このぬいぐるみが喋ってるの?何で紅劉君と親しげな感じ…ほんと何!?)
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