12章 主従の契約(前編)

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・ 「これ以上何かお聞きしたいのであれば旦那様にお尋ねになられては如何でしょう?──…そろそろ、ご親密に、ご夫婦らしい会話に慣れて頂くという手も御座います」 「夫婦だなんてっ…」 「ほほ…寝室も今や同室になされた──…儀式を済まされていないだけで御二人はもう立派なご夫婦で御座います…」 「そんなっ…部屋なんてあの人が勝手にっ…勝手に…」 ルナは否定しながら真っ赤になって目を游がせる。 モーリスはそんなルナの前に両膝をついてドレスを掲げた。 「モーリスっ…」 「ルナ様…どうぞこれを旦那様にお届け頂けるようお願い致します──」 「やだ、モーリス膝を上げてっ…」 「いいえ!ルナ様がこのドレスを旦那様にお持ち頂けるまで、この老いぼれはこのままで御待ちして居りますともっ…」 「そんなっ…」 「婚儀にこのドレスを纏ったルナ様を目にすることが…私はこの上無い喜びで御座いますから」 「だってあたしからなんてっ…」 自分の結婚のドレスを態々自分から頼みに行くなんて──… 恥ずかしいに決まってるじゃないっ!? 「おおぅっ…膝がっ…」 躊躇うルナの前でモーリスは苦し気な声を上げた。 「骨粗鬆症が痛む…っ」 「──…っ!?…」 「所詮、老いぼれの膝など頼み事の引き合いにもならないので御座いましょうかっ…」 「そっ…そんなつもりじゃっ……っんもう、わかったわよ!」 ルナは痺れを切らしたようにそう言うと、モーリスの手からドレスを奪うように抱き抱えていた。 モーリスはニコッと笑い、背を向けて部屋を出ていくルナを見送った。
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