12章 主従の契約(前編)

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「この人達は──?」 「皆、一人の女性で御座います」 「一人の?」 「はい」 美しく着飾った女性の絵から、人形を抱っこしてる幼い少女。家族に囲まれて微笑む淑女の絵まで揃っている…… 「名を、イザベラと申します」 「イザベラ…モーリスの奥、様?」 「いえ…彼女は私の愛した妻との間に産まれた愛しい娘で御座います…妻の肖像画は残念ながら、堕ちかけたこの邸の一部と共に灰になってしまいました…」 「この邸と?」 「はい…」 尋ねるとモーリスは物憂げに目を細めて伏せた。 「この邸はもともと…人であった頃の私が住んでいた邸宅で御座います」 「……──」 「私は──…この邸宅と私の財産。そして朽ちかけた私の命とを引き換えに娘を守っていただくよう旦那様に主従の契約を乞うたのです」 「主従…」 「はい…」 人間だったモーリスが自ら魔物のあの人の主従を乞うた!? 「守ってもらうって──…娘さんに何があったの!?…」 寂しげな瞳を見せる年老いた老紳士に聞いてはいけなかっただろうか? でも、尋ねずには居られなかった── ルナと同じ人間でありながら、モーリスは自ら吸血鬼となることを望んだ理由。 ルナはそれが知りたい。 ルナ自身、魔物になると言うことには今だ葛藤がある。
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