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魔物のあの人に全てを捧げ主従を乞わなければならないほど、モーリスを追い込んだこととは一体なんだったのか──。
「ルナ様──」
「……?」
「私は旦那様には感謝しても仕切れません…」
モーリスは何かを思い浮かべながら微笑んでそう漏らす…
そしてモーリスは埃をはたいた先程の赤い布を手にして差し出した。
「娘が嫁ぐ時に着ていたドレスで御座います…それと…」
白いフワリとした生地のドレスを赤いドレスに重ねて見せる。
「こちらは妻が私の元へ嫁いだ時に着ていたドレスで御座います」
「これを…どうしろと?」
戸惑うルナにモーリスは笑みを浮かべる。
「執務室にいらっしゃる旦那様に持って行って頂けると有り難く御座います」
「あの人にっ?」
「ええ」
モーリスは頷きながら笑っていた。
「旦那様ならセンスもよろしくございますから…ルナ様に似合うよう上手に仕立て直されると思われます」
「あたしに!?なぜっ!?」
「ルナ様──」
モーリスは優しい目を向けたまま真っ直ぐにルナを見つめる。
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