12章 主従の契約(前編)

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・ “旦那様も昨夜からその準備に入っていらっしゃる…” あの人も婚儀の準備に!?── ルナは邸の廊下を歩きながら考えると足を止めた。 手に抱えた二枚のドレスを見つめる。 婚儀の衣装をあの人に仕立ててもらうなんて…… どうやって仕立てるのかしら… 案外お裁縫が得意とか? 「ぷ…」 ありえないっ… 思わず笑いが込み上げながらルナはひらひらと手を振った。 だとしたらやっぱり魔力ね… ポンッとそこに有る物を出したり消したりできるのだから、ドレスを仕立てるなんてあの人にしてみれば雑作もないことなんだわきっと── ルナはそう思うと止めていた足をまた動かしていた。 グレイが居るという部屋へ向かう。歩きながらルナは邸の中を眺めた。 堕ちかけた邸── 灰になったってことは火事でも起きたのかしら… この邸の元の主人。モーリス… 彼に一体何があったのだろう── “これ以上何かお聞きしたいのであれば旦那様にお尋ねになられては如何でしょう?──” “…そろそろ、ご親密に、ご夫婦らしい会話に慣れて頂くという手も御座います” 夫婦らしい会話…… あの人と? なんだかピンとこない──
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