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ざわざわと漆黒の夜をざわめかせる──
白い別荘の一角。
開け放たれたバルコニーの扉のせいで風にカーテンがはためく。
カーテンの游ぐ隙間からは喉から手が出そうな程に欲していた獲物に覆い被さる強大な影がちらついている。
その影の主はベッドの上でバルコニーに眼を向けると、まるで隠すように獲物を抱き寄せていた。
暗闇の中にそびえ立つ木々──
そこからずっとルナを付け狙うような気配がしている。
グレイは牙を剥き出しに見せると瞳を赤く染めた。
その瞳の中で瞳孔が銀色に光る──
グレイの激しい威嚇が辺りの空気を震撼させていた。
その恐怖に木の上にあった気配は脅えて素早く姿を消し去る──
ざわめいた木々は静かに元に戻りまた、穏やかな夜風に葉を揺らしていた……
グレイは胸に庇ったルナの額に口付けた。
庇われたことに気付かずにルナは抱き締めたまま額に唇を押し当てたグレイの仕草に胸を熱くさせる。
覆い被さったまま、ルナを見つめるとグレイは念を飛ばした。
“モーリス…”
“はい、なんでございましょう。旦那様?”
“お前の言った通りまだ虫が彷徨いているようだ…
ルナはこのまま邸に連れて戻る”
“かしこまりました”
モーリスの了解を確認するとグレイは目を閉じていたルナを黒いマントでさっとくるんだ。
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