12章 主従の契約(前編)

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・ グレイはあのまま何処へ行ってしまったのだろう… 気持ちはまるで帰ってこない旦那を心配する新妻のようだ。 ルナは頭をぶんぶん振った。 「やだ…っあたし何考えてんだろ…」 気にかける自分が悔しくなる。 ルナは起き掛けで渇いた喉を癒そうと居間へ向かった。 「おや、おはようございます。今からお声を掛けにいこうかと…」 別荘から戻ってきていたモーリスが、朝食の準備を整えながら顔を向けた。 居間に入った途端、真正面にいたグレイに気付き、ルナはドキッとする。 「あ、早くてごめんなさい…」 中途半端に準備された食卓を見てルナは何となく詫びる。 「あたしも手伝うわ」 ルナは椅子に腰掛けていたグレイをちらりと盗み見るとモーリスの後を着いて厨房に逃げるように向かった。 ポットにお湯を移しながら居間にいるグレイに意識が向いてしまう。 “夕べはどこに行ってたの?” “どうして戻って来なかったの?” 「……──っ」 …はっ──! やだやだっあたし何を思ってこんなことを!? 「熱っ!!」 ルナは小さく悶絶を打つとポットのお湯を飛ばして声を上げた。
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