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少し振り返ると、高架下を歩く数人が引き戸の外から店内を覗き込んでいた。
開けておけば、何かの隙に逃げられてしまうかもしれない。
杉元が頷いたのを見て、松樹が引き戸を閉めながら空咳をする。
「じゃあ言ってあげるわ。実際に出たその煙がまた問題なのよ。よく見なさい、七輪の煙を」
杉元は自分たちが食べていたテーブルの七輪を見やった。
騒ぎのせいで、網の上に置かれていた野菜と肉が焦げ始めており、そこから立ち上る煙が店の天井近くに溜まっていっているのが分かった。
「だからどうした」
「あんたが爆発だって言った時の煙は床近くに溜まってたのよ。小学校の時に実験でやらなかったの? 熱い煙は上に昇っていくのよ。煙草の煙もそう。でもね、ドライアイスみたいな冷たい煙は上昇気流を生まないから下に溜まっていくの。あんたが叫んだ時の煙は下だったでしょ」
ああ、と杉元は頷いた。
「店の設備や調理から出た煙なら必ず上に行くはず、ということですね。つまり、作為的な煙だった」
「そういうこと」
松樹がチョーカーの男性を振り向く。
「さて……あんたの持ち物調べさせてもらおうじゃないの。何か出てきたら、それが証拠になるから。とりあえず、威力業務妨害で逮捕できるわよね。誰かが気分悪くなったら傷害もつくし」
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