解答

5/11

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「その子を傷つけた場合、傷害罪という立派な犯罪になります。そうなってしまえば、元も子もないのではないでしょうか」  チョーカーの男性が唸る。  相手を刺激しないよう、杉元は額に浮かんできた汗をゆっくりとぬぐった。  見れば、松樹も顔に汗をかいてきている。 「どうか落ち着いてください。その子を解放してもらえませんか? 僕が人質になります」  チョーカーの男性は、ゆっくりと考えてから首を横に振った。 「断る。お前も警察官なら鍛えてるはずだ」 「警察官ですが、自分の所属は交通課です。鍛えてもおりませんし、業務はデスクワークなのです」 「嘘をつけ。お前の体を押してもびくともしなかった。何かしてるだろう」 「いえ、何もしておりません」 「信じるはずねえだろ」  彼も汗をかきはじめている。  暑い。それぞれのテーブルにある七輪の火が点いたままのせいだろう。  杉元は次の言葉が続かなかった。  これ以上引き延ばしても、その先の展開が読めない。  犯人はどうしたいのだろうか。いや、逃げたいのは分かっている。だが、唯一の出入口を杉元が塞いでいる以上、逃げることはできないのだ。  そこで気づいた。     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加