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こもったような声の方向に目を向けると、チョーカーの男性は携帯用の酸素ボンベを口に当てて笑っているのが見えた。
その隣にいる若い女性も同様に酸素を吸いながら微笑を浮かべている。
「一酸化炭素中毒はきついよな。ま、安心してくれ。ずらかったら換気はしておいてやる」
チョーカーの男性は悠々と店内を歩きながら、サラリーマンの持っていたバッグを奪うと杉元をまたいで引き戸に手をかけた。
若い女性もにこりと微笑んで、杉元ではなく松樹に目を向ける。
「なかなか鋭い人だったわね。後々面倒そうだし、殺しちゃったら?」
「殺しはやらねえって言っただろ」
「何よ、逆らうの? そんなに爆発したい?」
若い女性が手にしたスマホを男性に見せる。
すると、男性はチョーカーを触りながら首を横に振った。
「ここで俺を殺してどうなる? さっさとずらかるぞ」
「……ったく」
若い女性がため息をつきながらスマホをバッグにしまう。
すると、松樹が悔しそうに歯を食いしばりながら彼女を睨み付けていることに気がついたらしい。
「その目、嫌い」
そう言うと、若い女性は履いていたスニーカーで松樹の顔を蹴飛ばした。
「行きましょ」
「またな、交通課の警察官さんよ」
引き戸が開かれる。
そして、チョーカーの男性と若い女性は姿を消した。
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