14人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「迂闊でした。まんまと罠に引っかかるとは……」
有楽町の駅からほど近い場所にあるクリニックで、杉元は待合室のベンチに座りながらペットボトルのお茶を飲んでいた。
その隣で、松樹が頬に貼られた湿布をさすりながら彼に寄りかかって頷く。
「私も気づくべきだったわ。何であんな裏口にいたのか」
犯人の二人が出て行った後、店の外から様子を窺っていた通りすがりの人たちが店内の異変に気づき、救急車を呼んでくれたのだ。
カップルの女性はかなり消耗していたらしく入院となったが、男性とサラリーマンは酸素吸入で回復し、今は警察の事情聴取を受けている。
軽症だった松樹と杉元は手当を受けてすぐに、警察から犯人の特定に駆り出され、先程ようやく解放されたところだった。
「まさか、あの女の子まで共犯だったとは」
杉元の呟きに、松樹が深い溜息をつく。
「ホント、あんたって見た目に騙されがちよね。私の顔を蹴ったような女なのよ? あーっ、悔しい! 早く見つけ出して、あの泥棒たちにビンタ食らわしてやらないと気が済まないんだから」
憤る松樹の肩をさすりながら、杉元はやりきれないように肩を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!