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「うん。その件でさ、お礼と一緒に捜査協力費ってのを貰ったのよ。それがそこそこな額でね。それでお昼と夜をご馳走にしようって思ったわけ」
「そういうことでしたか。と言うと、僕もご相伴に――」
「国家公務員が駆け出しのフードジャーナリストにたかるつもり? お昼のは自分へのご褒美なの。あんたは付き合い。ま、ちょこっとならおごってあげてもいいけど」
と言う松樹の悪戯っぽい笑みにはもう慣れている。何だかんだ言って、ご馳走してくれるのだ。
合わせて笑った杉元だったが、内心は複雑だった。
と言うのも、捜査協力費を支払った機動捜査隊の刑事が杉元に対して松樹を奪いにいくと宣言していたからだ。
自分がそうであるように、彼もまたフードジャーナリストとしてこの世を生き抜いている彼女に魅せられていた。
もちろん松樹は二人の間にあった話など知らず、彼については少しおかしいが仕事熱心な刑事として見ている。
その彼からもらった金で、これから一緒に食事をするのだ。
つまり、杉元にとっては面白くない状態にあった。
「それで、どこで食べるのでしょうか」
せめて食事ぐらいは楽しい気持ちで臨もうと、杉元が質問する。
「ここの並びにあると思うんだけど……」
松樹が視線を向けたのは、高架下に並ぶ店々だった。
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