問題

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 どうやら裏側らしく、小さな区画がびっしりと並ぶ中に、換気用の鈍い銀色をしたダクトが大きな口を開いている。  店で使い終わった油の一斗缶やダンボール、パレットなどが置かれていて、ダクトが僅かに見えるような状態だった。 「裏口からということは取材なのですか?」 「そうみたいね。ここは知り合いが始めた焼き肉屋でね、取材兼ねた応援で来たんだけど――」  しかし、出入口らしき場所が見当たらない。  ダクトの近くで若い女性がぽつんと立ちながらスマホをいじっているのが見えた。 「こんにちは。宮村さんっていらっしゃいますか?」  問いかけられた女性が顔を上げて首を傾げる。 「……私、お店の人じゃないんですけど……」  肩ぐらいまで伸ばした黒髪と細い眉に垂れ目が、どことなくおっとりとした印象を与える女性だった。  雰囲気は高校生ぐらいに見えたものの、ベージュのジャケットに白いワイシャツ、濃紺のキャミブラウスとスカートという姿が年齢をもう少し上に見せている。 「ごめんなさい、勘違いです」  杉元も頭を下げながら、高架下をぐるりと回って反対側へと向かう。  そこには想像通りの光景が広がっていた。  居酒屋、焼き鳥、寿司にイタリア料理。そういった店が狭い区画で区切られた中に思い思いの外観で並んでいたからだ。     
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