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歩みを進めていくと、松樹が言っていた焼き肉屋にたどり着く。
暖簾の下がっている狭い入口の引き戸を開くと、やはり思っていた通りの店内がそこにあった。
カウンターが五席に二人掛けのテーブル席が四つ。
それぞれの席には七輪が置かれていて、炭火焼き肉の店であることを物語っていた。
カウンターにはありふれた黒いバッグを傍らに置いたサラリーマンが、肉を焼きながら白いご飯を食べている。
テーブル席には、ジーンズに紺のセーターを着た三十代ぐらいの男性がビールを飲みながらホルモンをつまんでいた。
その近くで、二十代前半ぐらいの若いカップルがお喋りをしながら肉と野菜を焼いている。
カップルは小さなリュックを足下に置いているからデートなのだろう。
一方で三十代の男性は細いチョーカーのようなものを着けており、大きなボストンバッグということもあって、これから旅行にでも行くのか帰ってきたところのようだ。
「いらっしゃいませ」
寄ってきた女性店員へと、松樹は微笑みながら頷き、
「こんにちは。私、宮村さんに取材申し込みをした松樹と言いますが……今いらっしゃいますか?」
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