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問題
有楽町の駅で降りた杉元と松樹は、上をJR線が走る高架下へ向かって歩き出した。
平日の昼過ぎという時間にもかかわらず、駅前は買い物客やスーツ姿の男女で賑わっている。
地方の市や町が特産物を売っている特設会場があることも一因だろうが、杉元の知る限り、それがなくてもこの程度はいつも人の多い場所だという認識だった。
「いったいどこへ行こうと言うのですか?」
そんな人混みを縫うようにして新橋へ向かいながら、杉元は腰まで届く長い髪を左右に振りながらちょこまかと歩く松樹を見下ろした。
「今日はご馳走なのよ」
「今朝からそれの繰り返しですね。しかも夜にはうちの父親にもかなりの料理を振る舞ってもらえるとか。何があったのですか?」
「ふふふ」
淡い花柄のワンピースに薄いピンクのカーディガンを羽織った、いかにも女子というスタイルには不釣り合いな笑みを浮かべながら、松樹が頷く。
「あともうちょっとだから言っちゃうけど、この前の事件あったじゃない? あの英語が時々出ちゃう刑事さんの」
「ああ、田端で起きた殺人事件ですね。松樹さんが容疑者を当てて、今は起訴手続きがとられている」
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