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「お父さん! あなた何考えたの!?」
沈黙を破ったのは母だった。
父の肩をがしっとつかみ、力任せにブンブン揺らす。
「な、何じゃあ! だって『ピンクが似合う』とかじゃ無いんじゃぞ!? 『みちるはピンク』だと言ったんじゃ! つまりそういうことじゃろう!」
「どういうことですか! 普通に考えてそんなこと言うわけないでしょ!」
「ならどういうつもりで抜かしたんじゃ、あの男は!」
耳をつんざく両親の夫婦喧嘩に、みちるは目眩を覚えた。何だこれ。何だこの展開。
奈月が慌てて、両親の仲裁に入る。
「汐野様、ーー『ピンク』というのは、これのことです」
眩む視界の向こう、奈月が風呂敷の手さげから、あるものを取り出した。
一輪の花だった。
放射線状に広がる、濃い桃色の花びら。その先は細く裂けていて、花火を思わせる可憐な花だった。
「なでしこ……?」
そのつぶやきは、みちると両親、双方から同時に発せられた。
「そうです。日本語にありましたよね。女性の方を誉める、最上の言の葉が」
奈月のーー正確には会崎の誘導で、みちるも両親もその答えに辿り着いた。
「ーー『大和撫子』……?」
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