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広大な海が音を奏で、街をひらりひらりと桜の花弁が舞う。
ほのかに香る潮の匂いに乗って、街では至るところに音が溢れていた。
海の見える桜街──水ノ都──フィレートス。
そう呼ばれるコノ地で、一年で最も活発で盛大な祭──春祭が行われるのだ。
街は喜びと興奮に溢れ、少女は嬉々とした目で窓から街を見る。
春の穏やかで心地よい風が、頬を撫でた。
春祭まで後少し。
暗い部屋でふさぎ込む姉にも、喜びと光を届けてあげられるかもしれない。
少女はそう想い、心からわくわくしていた。
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