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「御ー姉ー様っ!」
愛らしい声の少女──エバが、少し声を大きくして姉を呼ぶ。
姉である美シイ少女はようやっとエバの声に気づき、ぼーっとした表情のままゆっくりとエバの方を向く。
肩につくかどうかの亜麻色の髪が柔らかく揺れた。
ソノ流れですら、とても美しく、綺麗だった。
…エバはただ、姉に元気を取り戻して欲しかった。
以前の元気の良さと温かい感情を取り戻してほしかった。
楽しそうに、歌う姿を思い出して欲しかった。
エバの姉──クロンティスは、エバの声にゆっくりと振り向き、一度エバを見ると、
何事もなかったかのようにまた窓の外へと顔をゆっくりと向け、静かに歌い出す。
ソノ言葉に、感情なんてなく、
ソノ表情に、感情なんてなく、
ただただ枯れてしまったように、
ただただ御人形さんのように、
美しく、静かで……。
ソレにエバの表情に曇りが刺す。
薄暗い部屋に、クロンティスの歌声と、エバの静かな息づかいだけが音となり伝った。
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