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「あいつは弱くない……卑怯者でもない」
そうだ、そもそも自分を魔力なしって言うのは変なんだ。
差別されるってはっきり分かってるはずなのに……それでも言うのは、まるでそう”見せている”ように見える。
実力を隠しているような気がする。
じゃなきゃ、あんな事言えないから。
「あいつの悪口を言うなら、関わらないでくれ」
俺はそう吐き捨てるように言い、教室を出る。
後ろから何か聞こえたが、無視した。
「……はぁ……」
校庭に着いて、俺は座る。
あいつらが言っていたことを思い出して、ため息をつく。
ああいうのにまだ慣れない。
どうして俺は特別扱いされるんだろう?
どうして……隣に居る人は馬鹿にされるのだろうか?
強くなりたかった。
目の前に困っている人がいて、傷ついている人がいて……手を差し伸べられないのは嫌だから。
……なのに、どうして……?
「どうした? まだ早いぞ?」
「……ラグ先生……」
悩んでいると、声がしたので顔を上げると、ラグ先生がいた。
……よく考えれば先生には準備があるのか。
別の場所で待ってれば良かったか?
「ふむ……あまり良くない顔をしているな」
「…………」
「初日からそんな顔をされては困るな……そうだな、魔武器作成は初めてじゃないな?」
「……はい」
ラグさんにそう言われ、俺は魔武器を召喚する。
飾り気のない、何も知識がなければ普通の大剣に見える。
それが俺の魔武器。
「……身体強化に筋力強化に治癒能力強化……とんでもないな」
「……そうなんでしょうか?」
「能力三つは珍しい方だぞ?」
流石にラグさんには知識があるのか、魔武器の能力を言い当てる。
やっぱりだ、この人は俺より絶対に強いと思った。
だから……
「……凄いんですか?」
「……ん?」
「俺は……凄いんですか? 特別扱いされる程なんですか……?」
俺はラグさんにそう聞いた。
この人なら正しい答えを出してくれると思ったから。
俺が目指すものが正しいのか、分かると思ったから。
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