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水龍
私はその日、山裾の街にいた。
懐かしい級友二人と会うために。
同窓会というほどでもない、三人きりの女子会。
気のおけない友人同士、時おり再会しては、美味しい料理に舌鼓をうち、高校時代の思い出話に花を咲かせるのが楽しみの集まり。
その日は、あいにくの雨だった。
このところ、ずっと降り続いてる秋の長雨。やむ気配はなく、雨足は朝よりずっと増している。
だからと言って、約束を延期するなんて、誰も言い出さなかった。
それもそう。お互い、忙しい日々の合間をぬって予定をたてているのだから。
「わーひどい!これは駅までバスだね」
待ち合わせ場所のフレンチレストランで食事を終え、店を出ると、すでに豪雨。
目の前の坂道は、上方から滝のように、雨水が流れて落ちていた。
傘をさしていても、意味なんてないくらい濡れそう。
「本当。せっかくお洒落してきたのに。クリーニング代もバカにならないよ」
叩きつけるような雨のせいで、歩いても二十分ほどの距離を、バスに乗って移動することになる。
そうして三人で乗り込んだバスは、目的地に着く前の地点で、停車した。
車内に運転手のアナウンスが流れる。
「駅周辺の道が冠水中のため、これより先へは進めません。
申し訳ございませんが、ご乗車のお客様は、こちらでお降りになり、他の交通機関をご利用ください」
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