1人が本棚に入れています
本棚に追加
もうどれくらい、こんな状況が続いてるのだろう。
あとどれくらい、ここでこうしていれば、助かるのだろう。
つかまり続けることに疲れ果て、顔を伏せた。
覚悟を決めなければいけないのかもしれない。私も。
気を抜けば、腕の力も指先の力も消え失せて、暗い水の底に引き込まれるだけだとわかっているけれど。
こんな恐怖を味わうくらいなら、そのほうが楽なんじゃないかとさえ思えてくる。
ああ嫌だ。限界。ギリギリ。
死ぬ瞬間ってどんな気分なのだろう?溺死って苦しいのかな?
「と、とまった!」
友人が叫んでハッとする。
流され続けていた建物が、大きな瓦礫の山に衝突し、動かなくなっていた。
ちょうど中州の岩にひっかかった枯れ枝のように、それ以上、先へ流されずにいる。
私たちは、瓦礫から突き出た鉄骨に手をかけ、慎重に足を伸ばした。
そのまま必死で、割れた巨大コンクリートのかたまりの上に、よじ登っていく。
できるだけ高く、なんとか安全な場所へ……
こんなことなら、普段からもっと運動しておけばよかった。
ボルタリングにもずっと興味あったのに、けっきょく思ってるだけで足を運ばなかったし。
スタミナがなさすぎる。部活をやっていた学生時代のように、機敏に手足は動かない。
先を行く友人たちを見つめながら、後悔していた。
最初のコメントを投稿しよう!