人形師 ウル

2/6
前へ
/8ページ
次へ
精巧な人形は人を惹き付ける魅力がある、それは美しさであったり恐ろしさであったり、人によって区々ではあるが人形は人を惹き付ける何かを宿すことが出来るのだ。 ならばそれを極めた先には何があるのだろう?そう疑問に思うのにそう時間は要らなかった。 美しさと恐ろしさを同時に宿す事の出来る人形が魂を宿せない道理は無い筈だ、そう考えたらもう止まらなかった。 人形を作り、限り無く人に近付けて行けばそれはもう人間と変わらず、魂だって宿っても不思議じゃない。 ならば魂とは?心とは一体何処から産まれ、そして何処に留まるのか、知りたい!知りたい!! 「聞いているのか人形師!」 「んぁ?…聞いてる、聞いてるよ~」 気が付くと目の前で壮年の男が唾を撒き散らしながら怒鳴っていた、この手の人間は嫌いだ、自分が偉いと思い込み、自身の権力が誰にでも通じると勘違をいしている。 「私の身の回りを護る自動人形を作れと何度言えば分かる!金なら望むだけくれてやると言うのに何故首を縦に振らんのだ!?」 「だ~か~ら~、お金の話じゃなくて興が乗らないって言ってるよね? どうせお前みたいのに渡したら本来の目的以外の事にも使うのが目に見えてるんだよねぇ~」 しかも容姿の注文からしてもうアウト、危険人物入り待った無しの即お帰り願いたい類いだ。 金髪碧眼の美少年に黒髪ツリ目の美少年、そして茶髪のオットリ美少年、挙げ句の果てには各人形の性格の注文まで付けてくる始末…正直言って用途が別物にする気満々なのを隠すつもりが無いのだろうか? 「なぜそう言い切れる!私の注文は刺客の油断を誘う為の物だ、断じて他意は無い!」 「お前自身の考えなんてどうでも良いよ、第一興が乗らない時点でお話にならないしね~」 興が乗る、これが一番大事な要素だ。 誰だって面白くも無いのにそれを作ろうとは思わないだろう?面白ければ喜んで作るし、面白いと思えば依頼が無くたって勝手に作る。 それが僕のやり方でずっと続けてきたスタイルだ。 「ハッ、所詮は子供、気分で仕事をするなど半人前も良いところだな!」 「……マスター、ご許可を…」 怒気を孕んだ低い声が背後から聞こえ、振り返ると今にも青筋が浮かんできそうな雰囲気のFー7と目があった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加