人形師 ウル

4/6
前へ
/8ページ
次へ
「…またですか、今年に入ってもう三人目ですよ?そう次々殺されては困るのですが、ウル博士。」 酷く濃い隈が特徴的な男が倒れ伏し物言わぬ死体になった壮年の男を前に深い溜め息を吐いていた。 「僕に文句を言っても無駄なのは君が一番知ってると思うんだけど~?」 その横では白衣を着崩し、その幼さに拍車をかけているこの現状を引き起こしたであろう原因がケラケラと笑っていた。 どうせまた後ろに控えている彼女にやらせたのだろう、遺体の首は在らぬ方向に折れ曲がり、他には目立った外傷が無い所から見て先ず間違い無いだろう。 自称 人形師ウル、しかしその実は魔石を動力にして動く魔動機研究の第一人者だ、彼女が作り上げた魔動機は数知れず、その数は数百から数千とも言われ詳しい数は把握されていない。 そもそも魔動機とは魔石を動力とし、尚且つ人間が使用する道具の事を指すが彼女の作る魔動機は見ての通り人の形を模している、それだけに用途は様々で後ろに控えている彼女の様に戦闘に特化していたり家事全般に特化していたりと多岐に渡る。 そして何より特殊なのが… 「何時も御手数を掛けます。」 「ハハ…これも仕事ですから…」 自我にも似た個性があり、話すことが出来るのだ。 本来魔動機は道具として世間からは認識されている、だが彼女の作る魔動機は自らの意思があるかの様に話し、時折彼女が魔動機であることを忘れそうになる。 「ま、ソレを早めに片付けてくれるならお茶くらいは出したげるよ~?」 「ハァ…また始末書か…」 本来俺の仕事は彼女の要望だったりを国に伝える使い走りみたいな物なのだが、時には今回の様に面会の渡りをつけたり、…そして死体の処理だったりと余計な仕事が増えたりしている。 王国騎士団 伝令部隊所属で部隊間の連絡役を担い、戦場を駆けずり回って居る筈の俺が何でこんな所で死体処理をする羽目になったのかはまたの機会に… 麦の入った麻袋を担ぐ要領で元上官を持ち上げ、俺は慣れた足取りでその場を後にするのだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加