人形師 ウル

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「お疲れ様~、それなりに手慣れてきたよね~ホント。」 「えぇ、お陰様で…」 只でさえ酷い隈が酷い顔色と相まって死人のような出で立ちに流石の僕も同情を禁じ得なかった。 …まぁ、それ込みで仕事をしているのだから同情するのも変な話だが。 「まぁ、それはそれとして国王への伝言をまた預かってもらえる?」 ・・ 「また…ですか?」 Fー7達のパーツ交換にあたり、その材料費はこの国の国費から捻出されている。 これは僕と国王との間で結んだ契約の内容によるものだがそれを勘違いした輩がさっきの壮年の男の様に依頼に来るのだ。 国費で好き勝手にしているのだから言うことを聞け、そう言った輩の口から出るのは決まってコレだ。 契約関係を主従関係と勘違いするのは勝手だがその勘違いを真実だと信じて疑わないのはどうなのかと常々思う。 「そう露骨に嫌な顔をしなくてもいいじゃないか、君はこれでお金を貰って居るんだし僕は外に出る手間が省ける、お互いに良いことばっかりだよ~?」 「俺は始末書と上官からの小言が付いてくるんですが?」 流石にそこまでは関知しない、小言も始末書も仕事の内だと割りきってもらう他無い。 こちらまで辛気臭くなりそうな深い溜め息を吐き、目頭を揉む彼には悪いが上官の小言に曝されてもらおう。 「それも君の仕事の内だよ、そもそもそう言った仕事を増やしたくないなら僕との渡りをつけなければ済む話しだと思わない?」 「俺にそれを断るだけの権限があると思いますか?」 まぁ、普通に考えれば無いだろう、依頼を持ってくるのは王国騎士団の中でもかなり上の方の騎士ばかりで一使い走りである彼には到底断る事など出来ない。 「同情を禁じ得ない不憫さだよね~、まぁだからと言って手放す気も無いけど。」 「貴女はただ単に面倒を押し付ける相手を確保しておきたいだけでしょう?」 全くもってその通り、一々材料の請求に城へ顔を出して居たんじゃ煩わしい連中に捕まるだろうし、何より僕自身あまり外に出たくないのが本音だ。 「あ、バレてた?」 「寧ろ隠す気すら無かったですよね?」 そんな事を話していると背後の扉から規則正しいノックの音が響いた。 「失礼します、マスター。」 「ん?どうしたの、Fー7」 申し訳なさそうに眉をひそめるFー7の手には一通の手紙が封を切られた状態で握られており、あまり良い内容の物では無さそうだ。
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