人形師 ウル

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「冒険者ギルドからです、指名依頼が溜まって来ている様でどうにかしろ、と…」 「またかぁ~…」 魔物討伐や採集依頼を主に受ける冒険者ギルドには所属することで数多くのメリットが存在する、例えば一般的に立ち入り禁止となっているダンジョン化した鉱山への立ち入り許可、ランクに応じた報酬や地位、僕の場合前者の為に所属したのだがランクが上がるに連れ、個人を指名した依頼と言うのがかなり舞い込むようになる。 それは普通のギルド員であれば名誉と金が同時に手に入るチャンスだが僕にとって指名の依頼は面倒以外の何物でもない、手付かずの貴重な鉱石や魔石をダンジョン化した鉱山等から得る、それ以外に興味がないのだ。 そして指名で舞い込む依頼の半数はFー7の様な魔動機の製作、そして残りの半数が独占している貴重な魔石の売買、どっちにしろ受ける気の無いものばかりだ。 「それともう一つ、ギルド長から緊急の呼び出しが掛かっているようです。」 「呼び出し?しかも緊急…何だろう、凄く嫌な予感がするなぁ~…。」 「それじゃあ、俺はこれで失礼します、材料のリストは何時も通りDー9さんから受け取っておきますから。」 少し冷え始めたお茶を一気に煽ると彼はFー7に軽く頭を下げ、部屋を後にする。 「はいはい~、お疲れ様~。」 「やはり彼は変わっていますね、私の様な者にも態度を変えないなんて。」 困った様な、それでいて少し嬉しそうに微笑むFー7に僕は小さく笑いを溢した。 「彼は色々と真面目だからね~、人であるかそうでないか、なんて些細な問題なんだと思うよ。」 「マスターも色々と理由を付けて居ますが彼のそう言う所を気に入っているのではありませんか?」 どうだろうね…、背後で優しげに微笑むFー7にそう告げ、僕は冷めたお茶を彼同様、一気に煽るのだった。
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