次の快速列車が来る間

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「……ソウデスネー」  逃げられませんよねー。  私は力なく腰を下ろした。  乗客は無情にも私たちの前を一瞥もせずに通り過ぎて行く。そして発車ベルが鳴り終わって扉が閉まると、真上君は私の腕をようやく解放した。 「まだ連絡先も返事も聞いてない。……それとも逃げることが佐藤の答えなのか?」  だって、どっちを選んでもバッドエンドの選択肢しか与えなかったのはそちらじゃないですか。一体私にどうしろと。  半分諦めの心境で真上君に反論しようと視線をやると、意外にも彼は真剣な表情をしていた。  ……あれ? 好戦的じゃない? 「もちろんいきなり恋人とか思ってないから。それどころか今は友人でもないんだろ?」  あ。さっき、ゆうじんと打ったのを同級生に直したことを言っているんだろうか。やはりメール画面が目に入っていたらしい。  ……いや。今、問題にするのはそこじゃなくて。今、恋人がどうとか聞こえなかった? 空耳かな? 「え、えーっと。念の為に伺います。付き合うのはお茶に付き合うってことですよね? いえ、当然分かっていますよ!」 「いや。それもそうだけど、俺と交際してほしいってこと」 「ですよねー。うん、そうだと思っ――はぁ!?」 「そこまで引くか?」  真上君は身体ごと引いた私に苦笑いする。 「じょ、冗談だよね?」 「違う」 「悪ノリでしょ!」 「違う」 「あ、復讐よね?」 「……違うよ」 「あ、あ、あ。えーっとえーっと、何?」  不甲斐ないが、頭に熱が上って働かない。 「ただ佐藤と付き合いたいと思ったから」 「今日、十何年かぶりに再会したばかりよ!」 「一目惚れを否定するなって言ったよな。……佐藤は――れじゃないけど」  途中の言葉は低く呟かれて聞き取れなかった。 「でも私のこと、何も知らないのに」 「表面から入る奴も否定するなって言ったよな」 「うっ」  自分が言った言葉で反論されるとは情けない。ここは一つ反撃しなければ。  口撃は最大の防御だ。 「女を見る目が無い!」 「はは、かもな」  ざくっ。  諸刃の剣だった……。 「肯定するなんて酷い!」 「どっちだよ」 「残念イケメン!」 「ありがとう」  けなしているのに何だか真上君は楽しそうだ。立場が逆転したみたいで悔しい。 「いきなりすぎ!」 「分かってる。だから友人からと」 「だったら付き合ってほしいって言わなくても良かったよね!?」 「それは……」
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