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お、怒らせちゃっ――。
「わっ!?」
不愉快にさせてしまっただろうかと懸念するや否や、彼は腰を上げて私の隣に移動した。
思わず身を引いてしまった私に彼は少し目を細める。
「何? 冷たいのが嫌なんだろ?」
「いや、そう、なんだけど」
わざわざ移動して来なくても……。イ、イケメンなのに律儀な人なんだな(偏見)
「それで佐藤は?」
「え? な、何が?」
「今、付き合っている奴いるの?」
「……いないよ。さっき両手を見せたでしょ」
だめ押しされるように再確認されて膨れっ面になってしまった私の一方、彼は明るい笑みを浮かべた。
「そっか、そうだよな。そうだと思った」
何、いなくて当然って顔しているのよ、私に失礼でしょう。
そう思う反面、なぜか彼の笑みにどきりとする。
やはり顔が良いってだけで、世の中許されるものなのだと羨ましさ半分、妬み半分。
「ところで話を戻すけど、そこまで言うなら仮に顔だけの奴に声を掛けられても、当然ひょいひょいついて行かないんだろうな」
「へ? や、やだ、それは仕方ないじゃない。女は何だかんだ言ってイケメンが好きなのよ」
彼のその発言に思わず心を読まれたかと動揺したが、しかし否定することはできない。
「お前、やっぱり顔か!」
今度は彼がお怒りモードのようだ。
「まあまあ、落ち着いてお聞きなさいな。いいですか? 自然界のことを考えてごらんなさい」
「は?」
彼は、いきなりコイツは何を言い出すのかと言わんばかりに呆れた表情を浮かべる。
失礼ね。私のご高説を聞いて、ひれ伏すが良いよ。
「自然界では強いオスや住まいを上手に作るオスがモテるじゃない。そして声がいい鳥や羽が美しいオス鳥もまたメスを引き寄せる。ね? 経済力や外見重視は自然の摂理なのよ」
私は腕を組んでふふんと笑うとドヤ顔してみせた。
「な、なるほど……っておい! 思わず納得しかけただろ。動物と知性を持った人間を一緒にするなよ」
「あら、動物差別よ、平家君」
「だったらお前は源氏か」
「あはは。冗談冗談。でもね、外見だけで近付いてくる人を片っ端から否定することもないと思うよ?」
「え?」
「穂高君なら女性をどういう所で好きになるの?」
「違う。そりゃあ、一緒にいて楽しい子とか……」
「ほら来た!」
彼に向かってびしりと指さしてやると、彼はぎょっとして身を引いた。
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