次の快速列車が来る間

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「それでさっきの話だけど、あなたは顔以外、良いところは無いとでも言われたの?」 「少しは言葉を選ぼうか……」 「あ、失敬、失敬」  今、イケメン様の欠点を探すのに忙しくて言葉など選んでいられませんでしたから。顔が良くて性格も良かったら、向かうところ敵無しじゃないか。私なんてどーすんだ。  彼は苦笑いしながら答えた。 「まあ、近いものがあるだろうな。俺はつまらない人間だそうだ」 「えぇ? 面白いよね、あなた。私、今超楽しいよ?」  いや、ホント。本心で楽しいよ?  しかし彼はなぜかため息を吐いた。 「そう言われて複雑な気持ちになるのは何でだろうな」 「なぜ遠い目をするのですか、槇村君」 「…………違う」  名前に対して否定はするが、質問には答えない彼。まあ、いいでしょう。 「ああ、でも考えてみれば結局、あなたに女性を見る目が無かったってことでしょうね」 「おい。だから、とどめを刺しに来るのは止めろ」  再び苦笑いしてみせる彼にこちらも申し訳なさの笑みがこぼれた。 「ごめんごめん。でもね。何よりも、その元カノさんはあなたに釣り合うような美女さんだったんだろうけど、人を見る目だけは無かったんでしょう。彼女はあなたという大きなお魚をみすみす手放した残念な人ということね」  慰めの言葉にしても我ながら上から目線だと思う。彼もさぞかし呆れているだろうと思っていると。 「やっぱりお前は昔から変わらないな」  少し照れたような優しい笑顔を向けられた。  どくん。  脈が乱れる。  遠隔で人の鼓動を変化させるなんて、これがイケメンの破壊力か、恐るべし。  若干熱くなった頬を隠すように耳元の髪に手をやった。  彼は勘違いしている。きっと彼の目には、私が子供の頃のような純粋さに満ちた姿に映っているのだろう。でも今の私は人を羨んだり、妬んだりもする、ただの大人になってしまった。  返す言葉が無くて沈黙していると、彼は佐藤? と首を傾け、私の顔を覗き込む。  止めて、その角度。無意識だろうけどずるいです! 「あーあー、ほ、ほらほら! 私のこと、良い奴とか思っているでしょう。早速、騙されているよ、三井君」  私は動揺を隠すように声を上げた。 「違う。騙されるって何が?」 「自慢じゃないけど、こう見えても私、心は真っ黒クロスケなんだからね!」 「……は?」  彼は一瞬目を見開き、そして直後ぷっと吹き出した。
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