散る桜、のこる桜も、散る桜

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散る桜、のこる桜も、散る桜

諸君は散るわれら桜木の花をみて、その現象に特別な印象をもってくれているようである。 散るというのはきみたちが勝手につけたまったくおおげさな印象。 散るということは、けじめをつけているわけではなく、いさぎよさでもない。 死をいみしない。 つぎへのいち状況にすぎない。 散る桜というが、われわれ桜木はいきている。 散るとはいきているあかしでしかないのに。 花はかれる。 葉もかれる。 が、それは土をそだてるため。 己をまもるためである。 諸君とて、土よりいで、土に還るではないか。 桜木はやすやすとかれるわけにはいかない。 誤解してもらってはこまる。 化粧っけはないけれど、 寒風にさらされているときのわれら桜木のすがた、その堂々こそをうたっておくれ。 散る桜、のこる桜も、散る桜 良寛さんのおっしゃるところのことは、そのとおりだとはおもう。 断片をうまくとらえてくれてはいる。
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