7人が本棚に入れています
本棚に追加
+
「あ、慎吾いたー!」
大学の喫煙所で煙草を吸っていた渋谷慎吾は、遠くから聞こえる声にケータイから顔をあげた。
「チカちゃん」
走って来た女性に軽く片手をあげてみせる。煙草を手早く灰皿におしつけると、女性の方に向かう。
「どーしたの」
チカの隣には、別の女性もいた。なんだか深刻そうな顔をしている。顔は見たことあるな。
「確か、チカちゃんと同じ文学部の……、サオリちゃん?」
記憶ファイルをたぐり、名前をひっぱりだす。サオリは驚いたような顔をして、一つ頷いた。
「あんた、ホント無駄に記憶力いいわね」
チカの呆れたような言葉に、
「可愛い女の子の顔と名前は忘れないよ」
へらり、と言葉を返した。
「それで、どうしたの?」
「依頼」
端的に言われた言葉に、表情を引き締める。
「なるほど」
最近、何でも屋として学内で名を広めている渋谷慎吾は、微笑みながら頷いた。
「話を訊きましょうか」
最初のコメントを投稿しよう!