7人が本棚に入れています
本棚に追加
+
家に残った沙耶は、とりあえず夕飯を食べ終えた。
円達からの連絡はない。大丈夫だろうか。どう見ても、あの人歪んでいたけれども。
「あたしも手伝えたらいいのに」
高校生だから、と除外されてしまうことは悔しい。でも、それが大人の対応だということはわかる程度には、子どもじゃないつもりだ。だから嫌なんだけど。
なんとなく立ち上がると、ベランダに出た。何か見えないかな、と思って。円や直純が通りかからないかな、と思って。
マンションの下を覗き込んで、
「っ!」
悲鳴を飲み込むと、慌てて室内に戻った。
なんで、いるの?!
例の男がマンションの下に立っていた。
こちらを見て、目が合って。笑った。
思い出したら、鳥肌が立つ。
腕を擦りながら、ケータイに向かう。
生きている人間が、一番怖い。
霊ならば、対処できる。祓ってしまえばいいのだから。
人間はできない。
生きている人間が、一番怖い。
背中にあんなに霊を背負って、あんな笑顔で笑うやつが、一番怖いに決まっている。
円の番号を呼び出していると、玄関のチャイムが鳴った。
驚いてケータイを取り落としそうに なる。
どうしよう、出たくない。
思っている間に、チャイムが連打されはじめた。
責め立てるように。
「もー、円姉はやくでてよっ!」
繋がらないケータイに怒鳴りつけた。
最初のコメントを投稿しよう!