櫻の樹の下には屍体を埋めている

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 +  家に残った沙耶は、とりあえず夕飯を食べ終えた。  円達からの連絡はない。大丈夫だろうか。どう見ても、あの人歪んでいたけれども。 「あたしも手伝えたらいいのに」  高校生だから、と除外されてしまうことは悔しい。でも、それが大人の対応だということはわかる程度には、子どもじゃないつもりだ。だから嫌なんだけど。  なんとなく立ち上がると、ベランダに出た。何か見えないかな、と思って。円や直純が通りかからないかな、と思って。  マンションの下を覗き込んで、 「っ!」  悲鳴を飲み込むと、慌てて室内に戻った。  なんで、いるの?!  例の男がマンションの下に立っていた。  こちらを見て、目が合って。笑った。  思い出したら、鳥肌が立つ。  腕を擦りながら、ケータイに向かう。  生きている人間が、一番怖い。  霊ならば、対処できる。祓ってしまえばいいのだから。  人間はできない。  生きている人間が、一番怖い。  背中にあんなに霊を背負って、あんな笑顔で笑うやつが、一番怖いに決まっている。  円の番号を呼び出していると、玄関のチャイムが鳴った。  驚いてケータイを取り落としそうに なる。  どうしよう、出たくない。  思っている間に、チャイムが連打されはじめた。  責め立てるように。 「もー、円姉はやくでてよっ!」  繋がらないケータイに怒鳴りつけた。
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