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「あれ?」
時間を確認しようとケータイを取り出した円は、首を傾げた。
沙耶からの着信が何件か入っていた。直純からも。全然気がつかなかった。
立ち止まると、折り返し電話をかけ始める。どうしたのだろうか。
しばらくすると、ぷっと電話にでた音がする。
「あ、沙耶ー? どうしたの?」
軽く声をかけるが返事はない。
「沙耶?」
耳を澄ますと、かすかに衣擦れのような音がする。ポケットの中で、勝手にスイッチが押されたときのような。
足音もする。二人分。
……家にいるはずなのに。
息をころして、全神経を音に集中させる。
「櫻の樹の下には屍体が埋まっている」
声がした。沙耶のものではない。男のもの。知っている人間のものではない。
ああこれは、ろくでもないことになっている。
「……ああ、もうっ!」
舌打ちすると、電話の向こうに意識を向けたまま、ひとまず拠点である公園へ向かった。
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